鬼滅の刃は主人公の竈門炭治郎が鬼にされた禰豆子を人間に戻すため、そして鬼の始祖である鬼舞辻無惨を倒すため、鬼殺の剣士として鬼狩りをするストーリーです。
その中では炭治郎を中心とした鬼殺隊の剣士がどんどん鬼を倒していくのですが、鬼=悪だけで終わらないのが、この鬼滅の刃の面白いところでもあります。
鬼も元々は人間であり、悲しく辛い人生を送る中でそのことに浸け込み鬼になった者が多くいます。
また、逆に人としての行いが卑劣であったり醜いことで鬼になった者もいます。
今回は、悲しい過去を持つ鬼と醜い過去を持つ鬼に分けて、その詳細などをご紹介していきます。
本記事にはアニメ化されていない記載がありますので、原作コミックを未読の方はご注意ください
目次
悲しい過去を持つ鬼
主人公の竈門炭治郎が、那田蜘蛛山で下弦の伍 累と戦った後の言葉をご存知でしょうか?
鬼は人間だったんだから 俺と同じ人間だったんだから
醜い化け物なんかじゃない 鬼は虚しい生き物だ 悲しい生き物だ
作中では、鬼を倒した後や戦闘中などに鬼の過去が描かれるシーンが多くあります。
鬼になった経緯と共に、その鬼が人間だった時の出来事が回想シーンとして描かれているのです。
人を殺め喰う憎き存在ではあるが、憎めなくなるどころか悲しく切ない気持ちになるストーリーがあるのです。
鬼舞辻無惨
鬼の始祖であり現存する鬼は全て鬼舞辻が人から鬼にし、絶対的な権力を持つ恐ろしい存在ですが、そんな鬼舞辻も元々は人間でした。
平安時代に産屋敷家の一族として産まれた鬼舞辻は、医者から「二十歳になる前に死ぬ」と宣告されるほど病弱でした。
その医師が少しでも長く生きられるようにと新薬を鬼舞辻に投薬したのですが、病状は悪化するばかりで、それに怒った鬼舞辻は医者を殺害してしまうのです。
しかし、その後すぐに薬の効果が出始め強靭な肉体を手に入れることが出来たのです。
医者が鬼舞辻に投薬したのは青い彼岸花を使ったまだ試作段階の新薬でした。
薬のおかげで強靭な肉体と健康な身体にはなれたものの、日光の下には出られず人の血肉を欲する鬼になってしまったのです。
鬼舞辻は青い彼岸花の捜索や日光を克服する鬼を生み出し自身に取り込むため、多くの人を鬼にし、そして、多くの人を殺し喰ってきたのです。
罪を重ねすぎていますし、その罪は残酷なものばかりですが、過去を暴いてみると病弱な身体を治すための薬のせいで鬼になった。つまり、望んで鬼になったわけでないのです。
更には鬼舞辻に新薬を投薬した医者も善良な医者であり、鬼にしようと投薬したわけではないということです。
手鬼
炭治郎が鱗滝さんの下で修業をし、鬼殺隊員になるための最終選別を受けた藤襲山に現れた異形の鬼「手鬼」。
四十年以上前の江戸時代に元水柱である鱗滝に捕らえられ、藤襲山に幽閉されていたのです。
そのことを恨み鱗滝さんの弟子であるキツネの面をつけた選別者を見つけては殺し喰っていたのです。
しかし、炭治郎に頚を斬られ手鬼は走馬灯を見るのです。
そこには、手鬼が人間だった時の記憶が蘇ります。
彼には怖い時にいつも手を握ってくれる優しい兄がいましたが、鬼となってしまいその優しい兄を咬み殺してしまったのです。
兄ちゃん怖いよ 夜に独りぼっちだ
俺の手を握ってくれよ いつものように
どうして俺は兄ちゃんを咬み殺したんだ手鬼「兄ちゃん兄ちゃん 手ェ握ってくれよ」
兄「しょうがねぇなあ いつまでも怖がりで」
この回想と共に涙を流しながら崩壊し始めます。
そして、最期まで残った手を炭治郎が悲しい匂いがすると握ってあげるのです。
「独りは怖い 手を握って欲しい」という想いから手がたくさん生えた異形の鬼になってしまったのです。
響凱
炭治郎が善逸・伊之助と初めて出会った時の鬼で、人里離れた山奥の屋敷を住処にしています。
かつては下弦の陸でしたが、人の血肉を喰う量が減り力が衰えてしまったことで、鬼舞辻に数字を剥奪されてしまいました。
量が喰えない響凱は、栄養価が高い「稀血」を好んで喰い十二鬼月に戻ろうとしていました。
稀血を持つ人間を1人喰うだけで、普通の血肉を持つ人間を50~100人喰ったのと同じ力が得られるのです。
人間の頃から伝奇小説を書く文筆家で、鬼になった後も文筆業で身を立てることを望んでいましたが才に恵まれなかったのです。
彼の書く小説を
「つまらないよ つまらないんだよ 君の書き物は 全てにおいて塵のようだ 美しさも儚さも凄みもない」
と酷評し原稿用紙を踏みつけにした人間を殺しています。
炭治郎との戦闘中、手書きの原稿用紙を踏まなかったことや、血鬼術に対する賞賛の言葉を受け、響凱は死ぬ間際に
「小生の・・・血鬼術は・・・・・・凄いか・・・・」
「小生の・・・書いた物は・・・塵などではない 少なくともあの小僧にとっては踏みつけに物ではなかっのだ」
「小生の血鬼術も・・・鼓も・・・認められた・・・・・・」
という言葉を残し、最期に自分のことを認められたと心救われ灰になっていくのです。
累の母蜘蛛
那田蜘蛛山で炭治郎と伊之助が初めて出会った鬼で、妖艶な女性の姿をしており蜘蛛の糸をつかって人間を操り殺す血鬼術を使います。
元々は幼女の鬼でしたが、累と出会い大人の女性の姿に変え累の母親の役割をしていますが、精神年齢は幼女のままなので、累の要望に応えられないことが多いです。
そのことで父蜘蛛に暴力を振われたり、幼女の姿に戻ってしまうことで累からも虐待を受けたりと、家族の中では一番弱い立場です。
炭治郎に頚を斬られそうになると、累や父蜘蛛などの家族からの虐待から解放されると頚を差し出したことで、一番苦しまない慈悲の剣技「 伍ノ型 干天の慈雨」で倒されました。
「優しい雨にうたれているような感覚 少しも痛くない 苦しくもない ただ温かい」
「こんなにも穏やかな死がくるなんて これで・・・解放される・・・・・・」
累の家族になってからの苦しい日々を思い出し、現実に戻ると炭治郎の優しい目を見て人間だった頃の記憶が蘇ります。
「人間だった頃 誰かに優しい眼差しを向けられていた気がする あれは誰だった?思い出せない いつも私を大切にしてくれていた人 あの人は今どうしているかしら」
ここの描写では優しいあの人が傷ついているシーンが描かれているので、おそらく鬼になった自分が殺してしまったのでしょう。
しかし、最期までそれを思い出すことも誰だったかも思い出すことも出来ませんでした。
そして炭治郎に「十二鬼月がいるわ 気を付けて・・・!!」と言葉を残し死んでいきました。
累
十二鬼月の下弦の伍 累は那田蜘蛛山で偽りの家族を作り住処にしている鬼です。
炭治郎と対峙した際に、鬼である禰豆子が人間の炭治郎を身を挺して守ったことに感動し禰豆子を自分の妹として欲しました。
累には人間だった頃の記憶が無いため本物の家族の絆に触れたら記憶が戻ると思っていたため他の鬼に自分の血を与え、同じ顔の家族を作り出し恐怖で従わせ「偽りの絆」を作っていたのです。
人間だった頃は生まれつき身体が弱く、歩く事さえ苦しい状態で床から起き上がることもほとんどできませんでした。
ある日、鬼舞辻に出会い血を与えられ鬼となり強い体を手に入れましたが、日の光に当たれず人を喰わなければならない。
人を殺した自分に刃物を向ける父に怒り、それを泣くだけで庇ってくれない母を累自身が殺しました。
累は「偽物の絆だったのだろう」と思いましたが、母の最期の言葉「丈夫な体に産んであげられなくてごめんね」という言葉で我に返り、父が自分を殺そうとした時に「大丈夫だ累 一緒に死んでやるから」という父の言葉を思い出し、唐突に理解する。
「父は俺が人を殺した罪を共に背負って 死のうとしてくれていたのだと」
「本物の絆を 俺はあの夜 俺自身の手で切ってしまった」「毎日毎日 父と母が恋しくてたまらなかった」
「偽りの家族を作っても虚しさが止まない」「どうやっても もう手に入らない絆を求めて 必死で手を伸ばしてみようが 届きもしない」
と考えながら散りゆく中で炭治郎が「抱えきれないほどの悲しみの匂いがする」と累の背に手を添え、累はその手の温もりに自分が何をしたかったのかハッキリと思い出します。
「僕は 謝りたかった ごめんなさい 全部全部 僕が悪かったんだ どうか許してほしい」
「でも・・・山ほど人を殺した僕は・・・地獄に行くよね・・・」
「父さんと母さんと・・・同じところへは・・・行けないよね・・・」
すると、亡き父と母が現れ累を迎えに来ます。
そして「一緒に行くよ地獄でも 父さんと母さんは累と同じところに行くよ」と累に優しく寄り添い、累はたくさんの「ごめんなさい」と涙を流し、両親と共に地獄の業火へと消えていきました。
堕姫・妓夫太郎
十二鬼月上弦の陸 堕姫と妓夫太郎は、鬼になる前から実の兄妹で遊郭の最下層である羅生門河岸で生まれました。
妓夫太郎は醜い容姿のせいでゴミのような扱いを受けていたものの、妹の堕姫は綺麗な美しい容姿だったため、妓夫太郎は自慢に思っていました。
大人になった堕姫は遊女となりますが、妓夫太郎を侮辱した客の侍の眼玉をかんざしで刺し失明させた報復として生きたまま焼かれてしまいます。
それを知った妓夫太郎はその侍を殺しますが、今にも死にそうな堕姫を抱きかかえているところに童磨(現 上弦の弐)から血を与えられ、兄妹で鬼となります。
音柱 宇髄天元と共に遊郭に潜入捜査をした炭治郎・禰豆子・善逸・伊之助たちと激闘を繰り広げたのち、堕姫と妓夫太郎は同時に頚を斬られ身体が崩壊していきます。
頚だけになった堕姫と妓夫太郎は鬼狩りに負けたことで口喧嘩となりますが、堕姫が先に消滅してしまいます。
その時、咄嗟に妓夫太郎が呼んだ名前が「梅!」でした。
堕姫という名前も酷いが、梅という名前も酷い。死んだ母親の病名から付けられた名だったからです。
そうして妓夫太郎は散りゆく中、堕姫のことが唯一心残りだと感じます。
自分が育てたためにこうなってしまっただけで、染まりやすい素直な性格の堕姫なら従順にしていれば何か違う道があったかもしれない。と思うのです。
そして、暗闇の中で人間の姿の堕姫と妓夫太郎が再会します。
妓夫太郎「お前はもう俺についてくるんじゃねえ お前とはもう兄妹でも何でもない 俺はこっちに行くから お前は反対方向の❝明るい方❞へ行け」
堕姫「嫌だ! 離れない!!絶対に離れないから ずっと一緒にいるんだから!! 何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に!!」
「アタシを嫌わないで!!叱らないで!!一人にしないで!! ずっと一緒にいるんだもん 約束したの覚えてないの!? 忘れちゃったのォ!!」
2人が人間であった幼い頃、雪が降る寒い中で藁に包まり話した内容
俺たちは二人なら最強だ
寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら約束する ずっと一緒だ 絶対離れない
ほら もう何も怖くないだろ?
妓夫太郎はこの記憶が蘇り、おぶさってきて堕姫と共に地獄の業火の中へと消えていったのです。
猗窩座
十二鬼月 上弦の参である猗窩座は、人を喰うよりも鍛錬している時間が長いのですが、鬼舞辻からは忠実で真面目なこともあり、気に入られていたようです。
人間の頃の名は狛治(はくじ)。
貧しい生活な上、病弱な父のためスリで薬代を稼いでは罪人として捕らわれていました。
それを知った父親は迷惑をかけたくないと自死してしまいます。
更に荒れていった狛治は、また罪を重ね江戸から追放されてしまいます。
行きついた地で素流道場を営む慶蔵(けいぞう)に拾われ、稽古をつけてもらい世話になる代わりに慶蔵の娘である恋雪(こゆき)の看病をすることになます。
3年の月日が経ち狛治も心穏やかになってきたある日、慶蔵に呼ばれこの道場の跡取りとなること、そして恋雪が狛治の事を好いていると告げられます。
父親の遺言にあったように「真っ当な生き方」をして人生をやり直す決意をし、命に代えても恋雪や慶蔵を守ろうと心に誓います。
恋雪と祝言を挙げることを亡き父の墓に報告に行くため道場を留守にした狛治。
その間に隣接する剣術道場の嫌がらせで井戸に毒を入れられ、慶蔵と小雪が毒殺されてしまいます。
俺は 大事な人間が危機に見舞われている時 いつも傍にいない
約束したのに結局 口先ばかりで何一つ成し遂げられなかった
それに激昂した狛治は剣術道場の67人を素手で惨殺するのです。
その騒ぎを耳にした鬼舞辻が伯治の前に現れ、鬼にしたのです。
鬼になって記憶を無くし また俺は強さを求めた
守りたかったものはもう何一つ残っていないというのに家族を失った世界で生きていたかったわけでもないくせに
百年以上 無意味な殺戮を繰り返し何ともまあ惨めで 滑稽で つまらない話だ
無限城で炭治郎と水柱 冨岡義勇と最期の戦いをした猗窩座は、戦いの最中で炭治郎に素手で殴られたことにより、素流の師匠である慶蔵を思い出し「守る拳で人を殺した」人間の頃の記憶が蘇ります。
そして猗窩座は、自分が殺したかったのは「辛抱が足りなく、すぐ自暴自棄になる自分」であることに気が付き、炭治郎に感謝の笑みを見せたあと自身に攻撃(破壊殺 滅式)をします。
父親や慶蔵が目の前に現れ感謝の言葉などを掛けられるが、鬼舞辻が猗窩座を呼び戻そうとします。
しかし、恋雪が「もう充分です もういいの もういいのよ」と自分たちを思い出してくれたことにお互いに涙を流し「おかえりなさい あなた・・・」と言われ猗窩座は塵になりました。
猗窩座の戦いには人間だった頃の記憶が土台となっており、術式展開の雪の陣は小雪の髪飾り 技の名には恋雪と一緒に見た花火の名 構えた技は素流。
生きて行く環境に恵まれず、家族や愛する人を失った狛治。
鬼になっても強くなるために鍛錬し続けたのは、殺したいほど毛嫌いしていた弱者は大切な人を守れなかった自分。ということを無意識に感じていたのかもしれません。
黒死牟
上弦の壱 黒死牟(こくしぼう)は、十二鬼月の中でも最強であり最高位の鬼です。
人間の頃は、日の呼吸の剣士 継国縁壱の双子の兄 継国厳勝(つぎくに みちかつ)という名でした。
子供の頃、不吉とされる双子で生まれつき痣のある縁壱とは大きく差をつけ、厳勝は継国家の後継ぎとして育てられます。
反対に縁壱は着る物も食べ物も教育も厳勝より粗末で、部屋も別々でした。
厳勝は、母親を見つけてはしがみつく縁壱を憐れんでいました。
戦国時代の武家であったため、跡取りとして育てられた厳勝は父親の輩下に稽古を受けていました。
厳勝7歳の時、1本を取ることが出来ない輩下を相手に稽古すらしたことのない縁壱がその輩下に失神させる一撃を放ち、厳勝の跡取り候補が危ぶまれそうになります。
また同じ頃、母親が病死し縁壱は出家することになります。
縁壱を見送った後、縁壱がいつも母親の左側にしがみついていたのは、母が左半身が不自由になり、縁壱がそれを支えていたのだと知り、激しい嫉妬と憎悪を抱くようになります。
時が経ち、地位や家族を持った厳勝は平穏な日々を過ごしていましたが、野営中に鬼に襲われたところに、縁壱が現れ助けられます。
幼少期とは比べものにならないほど縁壱の剣技は極められ、またあの激しい嫉妬や憎悪が蘇ったのです。
縁壱は剣技の強さだけでなく、人格者としても非の打ちどころがなく、厳勝はその強さをわがものにしたいと、妻子を捨てて縁壱と同じ「鬼狩り」の道に進むことになります。
入隊して月の呼吸を習得し痣を発現させますが、痣者は短命であることを知り、縁壱よりも強くなるための鍛錬の時間も残されていないことに絶望します。
そんな心を鬼舞辻に付け入れられ鬼になってしまうのです。
それから60年後、痣者であった縁壱と再会することになり衝撃を受けます。
鬼となった兄を憐れみながらも縁壱の一撃は黒死牟となった兄 厳勝を死へ追い詰めます。
あと一撃を喰らったら死んでしまう。というところで縁壱は老衰死してしまいます。
一度も縁壱に勝てなかったと惨めな思いを抱きながら、すでに死んでいる縁壱を斬ってしまいます。
幼き頃に弟 縁壱を想い「助けて欲しい時に鳴らせ」と渡した笛が縁壱の懐から出てきた時には、黒死牟は涙を流し、それ以降はずっとその笛を肌身離さず持ち続けていたのです。
無限城では、霞柱 時透無一郎、不死川玄弥、風柱 不死川玄弥、岩柱 悲鳴嶼行冥と戦い頚を落とされ、異形の姿になっても斬首を克服するが、強い侍とは程遠い醜い姿になった自分を見て「これが本当に俺の希望だったのか?」と自問自答するのです。
頚を落とされ 体を刻まれ 潰され 負けを認めぬ醜さ
生き恥
こんなことの為に 私は何百年も生きてきたのか?
負けたくなかったのか? 醜い化け物になっても
強くなりたかったのか? 人を喰らっても
死にたくなかったのか? こんな惨めな生き物に成り下がってまで違う 私は 私はただ 縁壱 お前になりたかったのだ
そして塵となり崩壊していく最中には
何故 私は何も残せない
何故 私は何者にもなれない
何故 私とお前はこれ程違う私は一体 何の為に生まれてきたのだ
教えてくれ 縁壱
心の中でそう問いかけながら塵が散った後には、黒死牟の着物の中には縁壱の笛が残されていたのです。
全てを捨ててまで鬼となった黒死牟は、最期まで弟 縁壱に勝つ事ができず、縁壱が死んだ後も日の呼吸が継承されていることに、自分は何も残せなかった、何になりたかったのかと。
あんなに惨めな思いをさせていた弟の縁壱になりたかったのだ。と悲しい過去とその想いがとても切ないですね。
珠世
鬼舞辻無残によって鬼になり400年以上いている珠世は、鬼舞辻に従う他の鬼とは違い鬼舞辻へ復讐心を持っています。
人間の頃、病を患っていたが我が子が大人になる姿を見たかった。その心に鬼舞辻が漬け込み鬼となってしまいました。
しかし鬼となった珠世はその子供や夫を喰い殺してしまい、更に自暴自棄になって大勢の人を殺し喰っています。
しばらくは鬼舞辻と行動を共にながら、夫と子供の仇討をする機会を狙っていました。
そんな時に継国縁壱が現れ、鬼舞辻を追い詰めたがあと少しの所で取り逃してしまい「頚の弱点を克服していたなんて・・・」と激しく落胆します。
そして「無惨を倒したい君の想いを信じる」という縁壱の言葉を糧に生き続けていました。
その後、浅草での炭治郎・禰豆子との出会いで、鬼殺隊に関わっていくことになります。
鬼を人間に戻す研究のため、炭治郎に禰豆子の血と鬼舞辻の血が濃い鬼の血液を採取するよう頼みます。
最終的には、鬼舞辻との最終決戦に備え産屋敷耀哉から協力を打診されるのです。
蟲柱 胡蝶しのぶと共に「鬼を人間に戻す薬」「老化を促進する薬」「分裂を阻害する薬」「細胞を破壊する薬」の4種類の薬を作ることに成功しました。
浅草で鬼舞辻に鬼にされた者と愈史郎の血鬼術を活用し、鬼舞辻に4種類の薬を注入することに成功しますが、鬼舞辻に取り込まれてしまいました。
我が子の成長を見届けたい想いに浸け込まれて鬼にされた珠世。
最期は、鬼舞辻を倒すための己の身を投じて貢献しました。
いつも傍にいた愈史郎と別行動をしていたのは、愈史郎の気持ちを知っていたからこそ。
愛する家族の仇のために自分の命を投じて鬼舞辻を倒したい。
そんな姿を愈史郎に見せたくなかったのでしょうね。
醜い過去を持つ鬼
鬼になる前から卑劣な過去を持つ物も存在します。
人として卑劣・卑怯・酷いおこないの末、鬼になった者もいるのです。
童磨
十二鬼月 上弦の弐である童磨は、極楽教を営む両親の元に生まれました。
生まれつき虹色の瞳で白橡のような頭髪という珍しい姿をしていることから「神の声が聞こえる特別な子」と神格化され育ちました。
人間の頃は両親や信者から神童だと担ぎ上げられていましたが、当の本人は極楽も地獄も信じていなく「馬鹿で可哀想な人を救ってやらねば」という考えで教祖をしていたのです。
童磨には人間ならではの喜怒哀楽といった感情がなく、母親が女狂いの父親をめった刺しにして殺した後、服毒自殺をした後も「部屋を汚さないでほしい」としか考えられないほど感情が無いのです。
自分以外の人間に対して常に哀れみ見下しているのです。
きっかけは不明ですが、二十歳の頃に鬼舞辻と出会い鬼となり、それ以降も極楽教の教祖を続けています。
鬼になってからは、人々の悲しみや苦しみから解放するためにその人を喰い自分の一部として永遠の存在にして救済することを「善行」と考えていました。
特に栄養価が豊富な女性を好んで喰っていました。
過去に蟲柱 胡蝶しのぶの姉である、元花柱 胡蝶カナエと戦闘でカナエを殺しており、その仇を取るために戦った胡蝶しのぶも自らに吸収し殺しています。
そして嘴平伊之助が幼児だった頃、伊之助の母 嘴平琴葉も殺しています。
伊之助が産まれてすぐ夫からの暴力から逃れるため、伊之助を抱いた琴葉が童磨の極楽教に駆け込み、仲良く暮らしていました。
特にお気に入りだったようで、喰わずに寿命が尽きるまで傍に置いておくつもりだったそうです。
しかし、童磨が信者を喰っていることが琴葉にバレてしまい、琴葉を殺し喰っています。
この時も童磨は後悔している様子は一切ありませんでした。
童磨は感情が無いがために、平気で人を殺し罪の意識がなく、むしろ自分が救っていると陶酔しているところが罪深いところではないでしょうか。
玉壺
十二鬼月 上弦の伍である玉壺は、壺と肉体が繋がった姿をしており、両目の部分に口があり、額と口部分に両目がある。
身体や頭からは小さな腕が生えており、奇妙な姿をしています。
「至高の芸術家」と自らを自称して、人間を見下し自己顕示欲がとても強い傲慢な性格です。
壺を使った自身の作品に強い執着心があり、他人に作品をバカにされると激怒します。
その作品を作るために人間の遺体を変形させるだけでなく、人命や死者の尊厳を踏みにじるような言動をします。
鬼の中でも類を見ない異常者です。
この異常な性格は人間であった頃から変わっていません。
人の時の名は益魚儀(まなぎ)といい、漁村で生まれ育ちました。
幼少期から動物や魚を虐待したり死骸を集めて壺に詰め込んだりと変なことばかり繰り返し、周りから気味悪がられていました。
また、漁に出た両親が酷い損傷の水死体で帰ってきた時も「美しい」と感動し、周囲から「気が触れたのだろう」と思われていたのです。
動物や魚への虐待行動だけでなく、自分をからかいに来た村の子供を殺し壺に詰めていたのです。
それを知って激怒した子供の親が二又銛でめった刺しにし、瀕死状態で放置されました。
そこを通りがかった鬼舞辻によって鬼にされています。
鬼になってからは特に子供を好んで喰っています。
鬼舞辻以外の生き物は同じ鬼や自身より上の上弦の鬼も見下し腹の中でせせら嗤って馬鹿にしているようなところがあります。
鬼になる前の人間の時から屈折した考えや感性を持っていた玉壺でした。
半天狗
十二鬼月 上弦の肆 半天狗は額にある大きなコブと二本の大きな角があり、老人のような姿をしています。
常に何かに怖れ怯え「ヒィィィィ」と悲鳴を上げたり、戦闘には非積極的で常に低い姿勢で怯えています。
戦闘において追いつめられると、感情を具体化した「喜怒哀楽」の4体の鬼に分裂し相手を翻弄させます。
さらに追いつめられると「怒」の鬼が他の3体を吸収し「憎」の鬼である憎珀天となり「喜怒哀楽」全ての能力を強化して使ってきます。
戦闘は分身した鬼に任せ本体は小さくなって身を隠すほど臆病な鬼です。
人間だったころから気弱で嘘つきで卑怯な性格でした。
自分の都合の良いように事実やその解釈を捻じ曲げ「自分は悪くない」と常に被害者だという認識を持っていたようです。
盲目と偽り盗みばかり働いていたが「この手が悪い」などと責任から逃れようとする人間でした。
妻や子供がいた時もありましたが、虚言癖や不誠実さなどを責められる度に妻子を殺していました。
名前・年齢・生い立ちをその場その場で変えていたため、自分の本来の名前・年齢・生い立ちが分からなくなっています。
そんな性格であったためよく虐めに合うことが多かったが、自分と分からないように仕返しをするような陰湿な部分もありました。
半天狗が最期となる戦闘では分身に戦わせ、自分は発見が困難になるほど小さくなり逃げ続けますが、炭治郎の特技である臭いをかぎ分ける力と覚醒によって滅殺されます。
最期まで「この世に自分より可哀想な者はいない」と思っていたようです。
獪岳
堕姫・妓夫太郎が死んだ後の空位になった後、上弦の壱 黒死牟の推薦で上弦の陸になった獪岳。
我妻善逸の兄弟子であり、元鳴柱 桑島慈悟郎の元で学び鬼殺隊に所属していました。
ひたむきに努力を重ねる真面目な性格ですが、一方で自尊心が非常に強く傲慢・独善的で承認欲求がとても強いです。
自分の未熟さを顧みず他者から評価されないことが不満に感じていました。
幼少期は家もなく泥をすするような貧しい生活を送っていましたが、鬼殺隊に入る前の悲鳴嶼が世話をしていた孤児でした。
しかし寺の金を盗んだことを他の子供たちから責め立てられ、寺から追い出されます。
その夜に鬼と出くわした獪岳は、自分が助かるために悲鳴嶼や他の子供たちの居場所を鬼に教え自分は逃げ出しました。
その後は育手である桑島に拾われ剣技や雷の呼吸を教わり、そこで善逸と出会っています。
桑島からは、壱の型しか使えない善逸と壱の型だけが使えない獪岳の2人が雷の呼吸の継承者だと言われていました。
臆病ですぐ泣いてしまう善逸に対し嫌悪感を持っていたため「何故コイツと同等の扱いなのか」と正当な評価をしてくれないと思い不満を抱いていたのです。
鬼殺隊員として任務する中で上弦の壱 黒死牟と出くわし「生きてさえいればいつか報われる」と考え命乞いをし鬼になりました。
雷の呼吸の使い手である弟子の獪岳が鬼になったことで、介錯人をつけずに切腹しています。
これは、無限城で対峙した弟弟子の善逸から聞かされますが、
「知ったことじゃねぇよ だから?なんだ? 悲しめ?悔い改めろってか? 俺は俺を評価しない奴なんぞ相手にしない」
「爺が苦しんで死んだなら清々するぜ あれだけ俺が尽くしてやったのに俺を後継にせず テメェみたいなカスと共同で後継だと抜かしやがったクソ爺だ」
と、自分を特別扱いしてくれない師匠に不満を募らせていました。
最期は善逸に頚を斬られ灰になっていく時に、愈史郎から
「人に与えない者はいずれ人から何も貰えなくなる 欲しがるばかりの奴は結局何も持ってないのと同じ 自分では何も生み出せないから」と言われます。
自分が助かるために人の命を売ったり恩人である桑島を平気で裏切ったりなど酷い過去を持っていました。
まとめ
今回は鬼滅の刃に登場する鬼の悲しい過去や卑劣・酷い過去をご紹介しました。
作中の戦闘シーンなどで明らかになる鬼たちの過去ですが、人間の頃の出来事が回想されるシーンが多く描かれています。
悲しい過去を持った鬼の多くは、その辛く苦しい過去に鬼舞辻に浸け込まれ鬼になっている者がほとんどでした。
人を喰う鬼ではありますが、悲しく辛い過去を知ると憎めなくなってしまうところも鬼滅の刃という物語の奥深さです。
逆に卑劣で酷い過去を持つ鬼もいましたね。
人間の頃から卑怯だったり卑劣なおこないをしたりしていることで鬼になった者がいましたね。
鬼舞辻だけが人間を鬼にすることができますが、強い鬼を12体作り十二鬼月を創り上げましたが、基本的に人を鬼にするのは鬼舞辻の気まぐれだとも言われています。
人間の頃の記憶を無くし、人の痛みや辛さも分からず自分勝手に人を喰う鬼ですが、元は人間でした。
悲しい過去を持った人も酷い事をしてきた人も、それぞれの心の中にある弱さに浸け込まれ鬼になっています。
炭治郎の言葉どおり「鬼は虚しい 悲しい生き物」なのかもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました。